三日目

三日目 熊野那智大社編

天気は晴れのような曇りのような微妙な具合。ここからは山の中に入っていくので少し不安です。

本日の目標は、「熊野那智大社へ参拝し、周辺を写真に収め、本宮近くの宿まで辿り着く」。

昨晩二人でかなりの量食べたせいか、限界まで白飯が詰め込まれて出てきたおひつをなんとか空に。

チェックアウト時にはここからのバスの乗り方や主にどんな経路があるのかまで丁寧にレクチャーしてくださり、さらに周辺の地図数枚セットで頂きました。民宿のおじさんの心配りに感謝して出発。

まずは紀伊勝浦駅の熊野交通バスターミナルへ。ターミナルと言ってもただ待合場所と券売所にコインロッカーがあるだけですが。荷物をもったまま移動するか散々迷った挙句、ここで荷物をコインロッカーに入れて一度戻ってくることに。迷っている間に時間がなくなっていたので急いで荷物を詰め込み、那智勝浦⇔那智大社往復で1000円の乗車券を購入。バスに転がり込みます。

時間も朝9時前とはいえ、乗っている人数は予想していたより少なく数組ほどで拍子抜け。

30分も経たずに大門坂前へ到着。一応このままバスで那智大社のすぐ手前の駐車場まで行くこともできるのですが、せっかく来たからには歩いて登ってみたいと思います。

というわけで本日はここから歩いていきます。

ここ大門坂は熊野古道の中でも熊野詣で栄えた当時の面影を特に美しく残しており、杉並木に囲まれた石段・石畳が600mほど、ふもとから那智山へと続いています。

石碑周辺からすでに雰囲気はありますが、「俗界」と「聖域」を「振り」分けるという振ヶ瀬橋を渡り、門のようにそびえる夫婦杉をくぐるといよいよ熊野古道大門坂、石畳の道に突入します。

熊野古道といえばまずこういった風景を思い浮かべる、というような静粛かつ雰囲気満点の道が続いています。

これも何回も訪れると感想は違ってくるのでしょうが、少なくとも初見のインパクトは十分すぎるほど。京都で言うところの竹林の道あたりに相当するのでしょうか。やはり一度は訪れておきたいところです。

登り始めてから数分で、先ほどまで晴れていた空が急に暗くなったと思うといきなり雨が。並木のおかげで致命傷とはなりませんでしたが、これは写真撮るのにも苦労するなと思っていると、すぐにまた木漏れ日がさし始めます。

天候に不安を感じつつも30分ほどで登りきり、いよいよ那智大社、青岸渡寺、那智の滝が近づいてきます。

ここから更に石段を登って行くとまもなく那智大社ですが、坂と湿度に体力を奪われたので熊野交通の那智山観光センターなる(少しうさんくさい)施設で少し休憩。

ちなみにこの熊野交通、熊野三山のそれぞれにちなんだオリジナルキャラクターを作っており、ここ那智山には那智霧乃さんがいらっしゃいます。

眼鏡っ娘枠。超可愛い。

一応三人ともちゃんと設定が作られており、最近はキーホルダーとかにもなりました。(詳細はまた後程)

大門坂の入り口で捨てたはずの雑念がすでに復活してしまいましたが、気を取り直していよいよ那智大社へ。

数百段の石段が続く参道の両脇には、土産屋などが軒を連ねており、特に疲れを感じることもなく登っていくことができます。

途中でまたしても雨に降られて雨宿りしつつ、10時過ぎくらいについに到着。熊野那智大社です。

正面にそれぞれ熊野夫須美大神(イザナミノミコト)大己貴命(オオナムチノミコト)などをまつる主要五社殿、そのわきに第六の御本殿である八社殿、八咫烏を祀る御縣彦社などが配されています。

境内はそこまで広くはありませんが、往時は那智の滝を中心にした神仏習合の修験道場として那智大社と共に栄えた青岸渡寺が隣接しているほか、かの有名な那智の滝と滝をご神体とする那智大社の別宮飛瀧(ひろう)神社、三重塔など見どころは非常に多いと言えます。

もちろん山の上にあるので、眺めも最高。

有名な三重塔と那智の滝の写真の構図もこのあたりかと。

休憩所もあります。じゃばらジュースが疲れた体に染み渡ります。

三重塔では別途拝観料が必要になります。以外にも内部は鉄筋コンクリート製、しかもエレベーターが中心に通っています。高所から滝と大社全体を眺めることができるのでこれはこれで。一気に4階まで登って、頂上から那智の滝を撮影します。

その後は那智の滝へ。道中の石段の急峻さに思わず転びそうになります。あとで確認したところ地図上では那智大社への裏参道となっていました。距離は短いながら、大門坂にも劣らない古道の雰囲気を感じます。

下り終わって飛瀧神社。

神社といっても那智滝自体が御神体であり、本殿も拝殿も存在しません。(でも社務所?はあり、御守りとかしっかり売っています。流石。)奥まで行くと滝の近くまで行くことができますが、さらに300円払うと滝の飛沫がかかるくらいの近さまで行くことができます。

そしていよいよ那智御瀧。那智山信仰の根本でもあるこの滝は、古来多くの修行者や参拝の人々に詣でられ、延命長寿の水としても信仰されているとのこと。

近くで見ると流石の大きさと神聖さ。「そらこんな滝見つけたらここに神を見出すのも分かる気がする…」とはyasuの名言です。ちなみに300円払っていると、滝壺の水が飲めます。

そうこうしている間にまたしてもバスの時間にギリギリになり、急いで熊野交通のバス停へ。

なんとか間に合い、紀伊勝浦駅まで戻ります。

うとうとしていたらあっという間に紀伊勝浦駅のバスターミナルへ到着。時刻は正午を少し過ぎたあたりです。

ここからの我々には二つの選択肢がありました。

即ち、昼食をとってからゆっくり本宮方面へ向かうか、すぐに出発し途中下車して熊野速玉大社へ参拝するか。ちなみにこの途中下車をするルートも民宿のおじさんに教えて頂いたもの。本当に感謝してもしきれません。

閑散としたバス待合所での議論の結果、後者を選択することに。

案の定残り時間も少ないため、急いで本宮までのチケットを購入…とここで、「3000円で3日間熊野交通バスに乗り放題の乗車券」の存在に気付きました。最初からこれを買っていれば那智山までの往復もこれで済んだので、完全に最初の乗車券を無駄にした形となってしまいました。悲しい。まあ、記念ということで。

ちなみに私が窓口でこの事実に打ちひしがれていた時、yasu君は何故か後ろでバスを待っていたお姉さんからパンを受け取っていました。なんじゃそりゃ。

気をとりなおしてバスへ。ここからまずは新宮駅の手前、熊野速玉大社へ。

道中、外を見ると見事な夏の景色が。朝のどんよりとした天候が嘘のようです。

権現前バス停にて下車。まっすぐ5分ほど、看板も出ているので特に迷うこともなく熊野速玉大社へ。

那智に比べると規模は小さいものの、綺麗な社殿と落ち着いた雰囲気の境内です。

ただし人は少な目。やはり人気がないのでしょうか。周囲にも観光客向けのお店などは少な目です。参拝自体は10分もあれば済むため、次のバスが来るまで数十分~一時間近くあることを考えると特に急がずとも無理なく参拝できそうです。

その後のバスで新宮駅へ。ここから更に熊野本宮行きのバスに乗り込みます。

なんでヤシ生えてるんだろう。

待ち時間の間に熊野交通の窓口を覗いてみると、こちらにも熊野交通のキャラクター。熊野速玉大社にちなんだ、速玉ナギさんがいらっしゃいます。

こちらは年下枠。

そしていよいよ熊野本宮行きのバスへ。

ついに今回の旅の主目的とも言える場所が近づいてきます。

市街地を抜けるとひたすら川沿いに山の中へと入って行きます。右手に見える川の広さ、山空川のコントラストに圧倒されながらバスに揺られていきます。

私は乗車して早々に眠ってしまいました。

主観としては一瞬、実際には一時間ほどかかって、ついに本宮前のバス停に到着。

まずは本宮参拝…と行きたいところだったのですが、一度眠ってしまったせいかここまでの強行軍のせいか、既に疲労が限界に。本宮には万全の状態で臨みたい…ということで、今日は大斎原を押さえたら宿に向かうことに。

明治22年の水害まで熊野本宮があったのが、ここ大斎原。神が舞い降りた地とされ、かつては熊野川・音無川・岩田川の3つの川の合流点にある中州でした。水害を免れた4社が現在の熊野本宮大社の場所へ移され、今では流失した中四社・下四社をまつる石造の祠が建てられています。

大斎原への参道の両脇は田んぼになっていて、ちょうど収穫前の稲で埋め尽くされていました。一面に実った稲穂が風に揺れる中、大きな鳥居が鎮座する景色は圧巻の一言。

さらにそこで、地元の人は普通に犬の散歩をしているのがまた不思議な感覚です。

大斎原境内は撮影禁止ですが、大きな杉並木と、その先の草原に佇む祠、風に舞う紙垂に自然と身が引き締まるように感じます。

その後はバスターミナルに隣接している観光センター的なところでおじさんに話を聴き、明日のプランと地図を入手。おじさんが本当に熊野古道が好きそうに話をされているのが印象的でした。

疲労困憊のため、やや早めながらバスに乗って本日の宿、湯の峰温泉へ。

狭い土地ながら、中央に川、高低差のある建物の配置、つぼ湯など、中々見所のある温泉街だと思います。

疲れた体に温泉と優しい夕食が染み渡る。こういうので良いんだよ こういうので。

夕食後、売店で買っておいた卵で温泉卵を作ろうと試みるも見事に失敗。

半熟以下の卵を啜り、明日の準備をして就寝。

4日目へ続きます。