黄昏時のボックスシートに秘封倶楽部を見出す
暇つぶしにYouTubeで車窓動画を眺めていたある日、ふとこちらの動画が目に止まりました。
https://www.youtube.com/watch?v=rJies-4mdsM
青い空に白い雲、そして両脇を流れていく山、川、集落、そして見渡す限りの田園。日本の原風景を凝縮したかのような風景に心奪われ、いつの間にか1時間が経過していました。
調べてみるとその「山形鉄道 フラワー長井線」は私の住む仙台から電車で1時間程度で訪れることの出来る場所らしい…
その出会いから数ヶ月後、諸用で宮城県美術館を訪れた折、「大山顕 工場・団地・土木構造物 写真展」のポスターに遭遇。そこにはこの展覧会がフラワー長井線沿線のホールで開催されるとの情報が。さらにその会期中、うずまのよどみの大洗ガルパン巡礼が立案。
仙台から東京へ行く口実を得て、ついにフラワー長井線に乗る時がやってきたのです。
2016/09/16 yasu
まずはフラワー長井線の始発駅である赤湯駅を目指します。
仙台から山形までは仙山線で1時間程度。途中、ニッカウヰスキーの蒸溜所で有名な作並駅や、立石寺のある山寺駅、「おもひでぽろぽろ」に登場する高瀬駅などがあります。
一方私は諸用で前日は朝まで作業をしていたため、仙台から山形までは爆睡、車窓からの風景は一切記憶にありません。終点の雰囲気を感じて目覚めるとそこは羽前千歳駅。山形駅の2つ手前に位置する駅です。こちらで奥羽本線に乗り換え、赤湯駅を目指します。
米沢行の奥羽本線に無事乗車。
奥羽本線には山形新幹線が乗り入れており、軌道は標準軌、線路のカーブも緩めに設計されています。そのせいか車両の安定性がかなり高い印象を受けました。
上山市から山間部を抜け、南陽市へ入ると一気に視界が広がります。車窓からは盆地に広がる田園風景が見渡せました。
ふと気になったのは山の斜面に沿って形成されている銀色の構造物。メガソーラーか何かか?と思い、調べてみた所、南陽市の特産品であるぶどうを栽培するためのビニールハウスのようです。たしかにこの斜面であれば日当たりも良さそう。
そんな調べ物をしていると、すぐ赤湯駅に到着。ついにフラワー長井線へ乗り換えます。
檻の中にきてけろくんが確保、収容、保護されていました。「はいらないでください」の看板が作る危険な雰囲気。
フラワー長井線はJRではなく、山形鉄道が運営する私鉄です。
看板がいい雰囲気。
いい雰囲気の看板その2
ついに列車と対面。一両編成の気動車です。
もちろんワンマン運転。車両後部から乗り込みます。
車内の様子。一般的な電車に乗り慣れた自分からすると驚きの長さのロングシートです。カーテンと座席の色がいい雰囲気です。(人がだれもいないのは発車時刻の1時間前に到着してしまったから
発射の時刻も近づき、奥羽本線からの乗り換えの人々が一気に乗り込んできました。
ついに出発の時です。
あの時車窓動画で観た風景が目の前に広がります。
のんびり田園地帯の真ん中を突き進む一両編成の気動車。時折聞こえてくるドップラー効果のかかった踏切の警告音が最高です。
あっという間に目的地の四季の郷駅に到着。終点である荒砥駅の一つ前の無人駅です。
電車は荒砥を目指し発っていきました。
空が広い。
四季の郷駅から歩いて3分。目的地である白鷹町文化交流センターAYu:Mに到着。木造の非常に立派な建物です。
そしてお目当ての写真展会場に到着。
大山顕氏はデイリーポータルZでおなじみの写真家、ライターであり、ジャンクションや団地、工場などをターゲットとして活動をされています。
個人的に気に入った団地写真。直線が多用された無機質な団地がシャープに切り取られています。
こちらの一角はジャンクションコーナー。強烈すぎるパースについてはやや違和感もありましたが、ジャンクションの機能美をしっかり感じました。
ジャンクションの中でも自分は車両一両分の幅の道路が好きで、それをいくつも見れたので満足でした。
こちらは高架下(左)と防火建築帯(右)のゾーン。
防火建築帯とはコンクリートという不燃性の素材でできた建築物を一列にズラッと隙間なく配列することで、火災が発生したときの燃焼を食い止める目的で設計された建造物群。ようするに日本で見受けられる長い商店街がそれです。写真右に展示されている作品は山形駅前の「すずらん通り」という商店街で、これはただの商店街ではなくて、防火という機能を持って設計された空間だったのです。
工場やジャンクション、団地など、機能美の魅力を再認識することができた良い写真展でした。(いつか工場夜景のページとかも整備したい…
展覧会に際して会場には大山氏の作品が展示
こちらはデイリー感がより強いコーナー。こういうの大好き。
帰りの電車まで時間があるので会場でゆっくりすることに。
高級そうなコーヒーマシンが無料で使えるようなのでありがたく頂く。コーヒー美味しい。
そして隣に鎮座するは大層レベルの高そうなオーディオ。コーヒー片手に音楽を聴いていると、館のおじさんが音量を上げてくれました。
いい時間が流れていきました。
(しかしこんな田舎によくこんな立派な施設建てたなとか思ったり思わなかったり。
電車の時間が来たので今度は復路です。特産の紅花がモチーフの真っ赤なラッピング列車が終点の荒砥を目指して走り去っていきました。
終点から折り返してきたこの列車に乗ることになります。
四季の郷駅で電車を待つ。
荒砥駅から戻ってきた車両に乗り込みます。
すると車内の様子が往路とは違う……
ボックス席だ……!!!
席に腰掛け窓を開け、風景、そして外から入ってくる風と音を楽しみます。
やっぱりボックス席だと旅って感じがします。
角丸窓、カーテン、座席の要素が詰まったこの小さな空間、良い。
開け放った窓から入ってくる涼しい風と、線路沿いのすすき、見渡す限りの稲穂。
そろそろ秋だなと感じました。
ところでこのボックス席、完全に秘封倶楽部じゃないですか。
僕には談笑する二人が見えましたよ。
それでは以下、秘封倶楽部の二人が乗っているという設定でフラワー長井線の写真をお楽しみください(?
ということで、フラワー長井線の旅は無事終了。
一人でのんびり車窓からの風景を眺めるという、非常に贅沢な時間でした。図らずして秘封倶楽部を見出すこともでき(こじつけ)、大変満足な小旅行でした。
さて、今回の小旅行はあくまで大洗への道中。ひとまず東京へ向かうため、ここからは新幹線に乗り換えです。
先程乗っていた一両編成の気動車を尻目に最新型の新幹線が轟音を立てながら入線してくる様子はなかなか見れるものではありません。
福島駅までもう少しのところから撮影。そして旅は大洗巡礼へ…