日本の夏を求めて日本海へ
西に引っ越すことが決まる以前から、いつか訪れてみたい駅がありました。
それが、山陰本線の鎧駅です。
鎧駅は日本海に面した無人駅であり、何を隠そう2001年冬の青春18きっぷのポスターのロケ地として使用された聖地なのです。
そして2017年7月30日、私は個人的に城崎温泉に来ていました。
温泉を楽しんで改札をくぐって帰宅しようとした折、ふとあの駅の事を思い出しました。「せっかくここまで出てきたし、鎧駅行っちゃうか。」
即座にきっぷを払い戻し、完全にノリと勢いで城崎温泉駅で青春18きっぷを購入。
聖地 「鎧駅」を目指す、山陰の旅が始まりました。
2017.7.30 yasu
以前より訪れてみたかった城崎温泉へ、特急こうのとりと特急きのさきを乗り継いでやって来ました。
天気は完璧に晴れ。とんでもない暑さの豊岡の夏です。
城崎温泉街の周囲は緑の山々に囲まれ、蝉の声が響き渡っています。
城崎温泉といえば柳の並木。夏の柳は青々としていて爽やかに風になびきます。
温泉街を散策していると、角打ちのある酒屋を見つけたので入ってみました。
店内のショーケースで見つけたのは、すいかラベルの日本酒。とてもフレッシュで甘い香りが広がります。つい自分用に一本買ってしまいました。
城崎といえば城崎ビールも有名です。とりわけ「カニビール」は有名でしょう。コレも飲んでみましたが、蟹の味はしませんでした。
(直営店の方に聴いてみた所、カニに合うようなビールを設計したとのことでした。スタイルとしてはエールらしいです)
さて、いよいよ城崎温泉を出発する時間です。眼前の電車で豊岡へ向かい、谷川経由で姫路まで戻ろうかと考えていたのですが…
ここまで見事な青空と緑の夏にあって、そのままこの地を去るのはもったいない。ここでふと思い出したのが山陰本線の誇る秘境駅、「鎧駅」です。
2002年の青春18きっぷのポスターロケ地としても有名なこの駅は、何と言っても眼下に広がる真っ青な日本海が特徴で、日本の夏はまさにそこにあるはずです。
この完全な夏日にその聖地まで電車で30分ときたのなら、もう答えは一つ…
豊岡行きの車両を見送りました。
そして手に持っていた切符を払い戻し、青春18きっぷを購入!!!!
そして浜坂行きの鮮やかな赤の気動車が城崎温泉駅に到着。
2017年の夏が始まります。
車窓から見える風景は本当に鮮やかな青と緑。心が洗われていきます。
路線はしばらくしてついに日本海へ。日本海ってこんなに青いんですね。岸壁に空いた穴は「淀の洞門」です。車窓からここまでバッチリ見えるとは…
やはり青春18切符の旅はお得です。
30分ほど車窓からの風景を楽しみ、ついに鎧駅へ到着の時です。ワンマンカーなので先頭車両のドアから下車します。
ついに念願の鎧駅に降り立ちました。赤い車両は程なくトンネルの中へ姿を消していきました。
ここで下車したのは当然ながら自分だけです。電車が居なくなったホームには蝉の声がけたたましく響いています。
ホームから出てみました。見事にシンプルな無人駅です。
40m下には海が広がっているはず。
秘境駅にノートあり。有志によるイラストも多数。(個人的見解として、イラストに加えて本人のサインを調子に乗って載せるのはいかがなもんかなと思ったり)
しばらくして、車で老夫婦が駅にやってきました。後に自転車やバイクで訪れている人もいました。観光地としては有名なももの、律儀に車両で来る人はなかなか居ないということでしょうか。
さて、絶景へのちかみちを使って向かいのホームに行ってみます。
なんということだ。夏だ。
そして一体なんなんだこの地形は。漁村好きと高低差好きにはたまらない空間です。
全ての建築が瓦屋根というのも驚きです。
坂を下って海に向かってみます。
写真の右上の崖に上に建物が建っているのにお気づきでしょうか。目を凝らしてみてみると、鳥居らしきものが見えます。どうやら神社のようです。
海と山と漁村と駅と神社がZ軸を活用しつつここまで高密度にまとまっているなんて、あまりに出来すぎている。素晴らしい場所です。
神社については後で歩いてアタックすることにしました。
民家の間の通路を抜けると…
港につきました。港では子供達が網で魚を取ろうと遊んでいました。
来た道を一旦戻り、先程見つけた神社へ向かってみます。
十二社神社につきました。
毎年10月には麒麟の獅子舞も執り行われるとのこと。
ここまで訪れることが出来た感謝と、本日中の無事の帰宅とを祈り、しばらく木陰で休ませて頂きました。
神社の裏手に回ってみると、見事な田んぼが山の谷間に広がっていました。使える土地はなんとしてでも耕作して活用するという意思が伝わってきます。
そろそろ帰りの電車がやってくる時間です。駅に戻るべく、集落の上方を目指して歩みを進めます。
配管から水がたらいにじゃばじゃばかけ流しされていました。涼しげで良い…。
この山陰本線の下に設けられたレンガ造りのトンネル。この道を真っすぐ行けば隣駅の余部駅へ行けるらしいが今回はパス…
トンネルを抜けた先には線路沿いへ続く近道がありました。
鎧駅へ戻ってきました。相変わらず人は居ません。
カーブミラーに映る海とホーム。いいですね。
定刻の10分遅れで浜坂行きの電車が到着。ワンマンカーの乗り方に戸惑いましたが、なんとか乗車することが出来ました。
電車は浜坂を目指し走り始めました。
余部鉄橋で有名な余部駅を過ぎると、眼科に美しい田園地帯が広がっていました。田植えの水張りの時期もさぞ美しい景観が広がっていたのでしょう。
乗換駅の浜坂駅に到着です。
電車を乗り換え、今度は鳥取駅を目指します。
道中があまりに田舎すぎて恐れおののいていましたが、無事に鳥取駅に到着しました。人生初の鳥取県です。砂丘を観に行きたいとも思いましたが時間がなく、
すぐさま智頭行きの因美線に乗り込みます。
山陰から山陽へ向かう路線なだけあって、車窓からの風景はひたすらに農村地帯です。
山がちな農村地帯では突然現れるあまりに不自然で巨大な橋脚を観て不気味さを感じるのが好きです。
さて、智頭駅に到着です。
だんだん西日も指してきました。
智頭駅では智頭急行智頭線へ乗り換えます。どうやら智頭線は山陰と山陽を結ぶルートとして有名らしいです。
上郡行の智頭線。一両編成の気動車です。レトロなデザインが良いですね。
ここで誤算がありました。智頭線が私鉄ということを失念していたため、追加で智頭線のフリーきっぷを購入することに…
(ナビタイムの運賃内訳ではどういうわけかJRとひとまとめにされていたため、JRの路線だと勘違いしていました。やはり秘境駅巡りにあたっては乗り換えアプリは信用しない方がいいですね)
やがて日は山に遮られ、辺りは一気に暗くなりました。
ようやく智頭線の終点、上郡駅に到着。 上郡で山陽本線へ乗り換えてこの旅は終了となります。
城崎温泉への往路を含めれば姫路→三ノ宮→三田→城崎温泉→鳥取→智頭→上郡→姫路と、一筆書きの充実した旅でした。
ちょっと自宅から足を伸ばせば、突発計画でも色んな場所へ電車で行ける。そんな西の魅力に改めて気付かされた旅となりました。
次は四国にでも行きましょうかね。
2017.8.6 yasu